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名古屋地方裁判所 昭和44年(わ)1005号 判決 1973年5月14日

本籍

愛知県一宮市今伊勢町本神戸字北無量寺一、一三六番地

住居

名古屋市千種区堀割町二丁目二一番地

会社役員

成瀬洋三

大正八年三月一一日生

右の者に対する出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、所得税法各違反被告事件について、当裁判所は検察官水野基出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年二月および判示第一の(一)の罪につき罰金二万円、判示第二の(一)の罪につき罰金八〇万円、判示第二の(二)の罪につき罰金二五〇万円に処する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。右各罰金を完納することができないときは金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、

第一(一)  昭和二九年一〇月上旬ころから名古屋市昭和区雪見町一丁目一八番地で、手形割引の方法による金銭の貸付またはその媒介をなす業を開始したが、昭和三二年五月三一日に至るまで、大蔵大臣に対し、右営業開始に関する所定の届出をなさず

(二)  昭和三〇年四月三〇日から昭和三一年一二月二四日までの同罰後七二回にわたり、別紙犯罪一覧表記載のとおり同表番号1から43までは名古屋市熱田区横田町二丁目二二番地株式会社藤田製作所において、同会社に対し(川村一男との間に)同表番号44から70までは同市中区 重町二丁目一九番地東京白煉瓦株式会社において、同会社に対し、(同表番号44から55までは花村欽二、同表番号56から70までは小室秀弥との間に)、同表番号71、72は同市中区南大津通り四丁目一番地喫茶店「シエル」において、株式会社伊藤鋳造所に対し(高須恒雄との間に)、いずれも手形割引を行うにあたり、その都度右割引料に相当する金額(同表天引利息欄記載)を手形額面金額から天引して残額(同表交付額欄記載)を前記各会社に交付する方法を用い、もつて一〇〇円につき一日金三〇銭をこえる利息(同表借受日歩欄記載)の契約をなし

第二  昭和三一年四月ころまでは名古屋市昭和区雪見町一丁目一八番地に、同年五月ころ以降は同区汐見町五番地に居住し、手形割引の方法による金融業を営んでいたものであるが、所得税を免れようと企て、明確な商業帳簿の備付記載をなさず、約束手形等の取立に際しては架空名義を使用する等の不正な手段を講じて

(一)  昭和三〇年一月一日から同年一二月三一日までの間(昭和三〇年度)における被告人の所得税につき、同期間における総所得金額が少くとも金六、九〇一、五〇四円であつたにもかかわらず、これを秘匿して所轄昭和税務署に対し、所得税法所定の申告期限である昭和三一年三月一五日までに所定の申告をなさず、よつて右所得に対する所得税金三、八〇五、四七〇円を不正に逋脱し

(二)  昭和三一年一月一日から同年一二月三一日までの間(昭和三一年度)における被告人の所得税につき、同期間における総所得金額が少くとも金一九、一三八、三〇五円であつたにもかかわらず、これを秘匿して、所轄昭和税務署に対し、所得税法所定の申告期限である昭和三二年三月一五日までに所定の申告をなさず、よつて右所得に対する所得税金一一、七三四、八九〇円を不正に逋脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、差戻前第一審の第一三回、第四〇回、第四一回、同控訴審の第六回、当審の第一四回ないし第一七回各公判調書中被告人の各供述部分

一、押収してある代金取立通帳と題する手形明細帳一通(証九五号)、手形明細帳三通(証九六号、一三六号、一四一号)

判示第一の各事実につき

一、被告人の検察官に対する昭和三三年三月一七日付、同月二二日付および検察事務官に対する同年二月一七日付、同月二四日付、同月二六日付(二通)、同月二八日付、同年三月七日付各供述請書

一、別紙第四表証拠欄記載の東京白煉瓦株式会社、株式会社藤田製作所、株式会社伊藤鋳造所に関する各証拠および大蔵事務官谷高佐一作成の各手形整理カードのうち別紙六表記載のもの(なお、右関係証拠中、第一の(二)の各事実についての証拠明細は別紙第六表のとおり)

判示第一の(一)の事実につき

一、愛知県商工部長古屋久雄作成の回答書

判示第二の各事実につき

一、被告人の検査察官および検察事務官に対する各供述調書

一、被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、差戻前第一審の第九回、当審の第八回各公判調書中証人谷高佐一の供述部分

一、大蔵事務官谷高佐一作成の各手形整理カード

一、押収にかかる代金取立手形預り証二通(証一三九号、一四〇号)

一、別紙第四表中証拠欄記載の各証拠

(法令の適用)

被告人の判示第一の(一)の所為は、出資の受入・預り金利等の取締に関する法律第一二条第一号、第七条第一項に、同(二)の各所為はいずれも同法第五条第一項に、判示第二の各所為はいずれも昭和四〇年法律第三三号所得税法附則第三五条により適用される昭和三七年法律第六七号による改正前の旧所得税法第六九条第一項に該当するところ、判示第一の(二)の各罪につきいずれも所定刑中懲役刑を選択し、判示第二の各罪につきそれぞれ所定の懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により最も重い判示第二の(二)の罪の刑に法定の加重をなし、判示第一の(一)の罰金刑について同法第四八条第一項により右の懲役刑と併科することとし、判示第二の(一)、(二)の各罰金刑については昭和三七年法律第四四号附則第二条により、同法による改正前の旧所得税法第七三条が適用される結果、右各罪について各別にこれを科することとし、その刑期および金額の範囲内において被告人を懲役一年二月および判示第一の(一)の罪につき罰金二万円に、判示第二の(一)の罪につき罰金八〇万円、判示第二の(二)の罪につき罰金二五〇万円に処し、刑法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、被告人が右各罰金を完納することができないときはそれぞれ同法第一八条により金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。訴訟費用については、刑事訴訟法第一八一条第一項本文を適用して全部これを被告人に負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 村本晃 裁判官 柿沼久 裁判官 前坂光雄)

別紙犯罪一覧表

<省略>

第一表

昭和30年度収支計算書

<省略>

第二表

昭和31年度収支計算書

<省略>

第三表

<省略>

第四表 収支計算書内訳及びその証拠の標目

註 以下次の略号を用いる。

1 (株)…… 株式会社

2 18公 調 第18回公判調書(但し、控訴審においてのものは控、当審においてのものは当の略字を冒頭に付す。)

3 <証>…… 証人の供述又は供述記載

4 <検>…… 検察官に対する供述調書

5 <大>…… 大蔵事務官に対する質問てん末書

6 <上>…… 上申書

7 <事>…… 検察事務官に対する供述調書

8 33,228… 昭和33年2月28日

9 冒頭‥… 検察官提出の冒頭陳述書

第一昭和30年度

<省略>

<省略>

以上

第二昭和31年度

<省略>

<省略>

第五表割引料収支明細表

註 1.番号は、大蔵事務官谷高佐一作成の手形整理カードによった。

2.日歩割引料の空欄の固所は右手形整理カードと同じである趣旨である。

3.同表に用いた略号は、この表においても用いることとする。

昭和30年度

<省略>

昭和31年度

<省略>

第六表

判示第一の(二)の各事実の個別証拠細目

<省略>

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